狂犬病予防

【世界と日本で問題深刻】狂犬病発生状況の実態とその対策について

1.はじめに

(1)狂犬病とは

狂犬病とは、狂犬病ウイルスによって引き起こされる感染症で、神経系に影響を与え、発狂やけいれん、呼吸不全などの症状が現れます。一度発症すると、死亡率はほぼ100%であり、治療法が確立されていないため、予防が非常に重要です。感染源は、狂犬病ウイルスを保有している動物(野生動物やペット)であり、感染は唾液によるかみつき傷や、目や口からの接触によって起こります。世界中で発生しており、特に発展途上国で深刻な問題となっています。

(2)狂犬病の深刻さ

狂犬病は、感染すると必ず死亡する可能性があるため、深刻な問題とされています。発症すると、神経症状や呼吸器症状が現れ、最終的には脳炎を起こし、死亡します。特に発展途上国では、家畜の不十分な管理や野生動物との接触が多いことから、狂犬病の発生率が高く、問題となっています。世界保健機関(WHO)によると、年間で5万人以上が狂犬病に感染しており、そのうち99%以上がアジア・アフリカ地域で発生しています。

また、狂犬病は野生動物からペットに、そして人に感染することができるため、人間にも感染リスクがあります。特に日本では、国内での狂犬病発生はほとんどありませんが、海外旅行者やペットの輸入によって持ち込まれることが懸念されています。昨今では、外国産のペットを飼育する人々も増えており、注意が必要です。

狂犬病は、発症後の治療が困難であるため、予防が大切です。WHOは、狂犬病予防のために、予防接種や野生動物の駆除などの対策を呼びかけています。このような対策を実施することで、狂犬病発生率を減らし、狂犬病による被害を未然に防ぐことができます。

2.世界的な狂犬病発生状況

(1)主な発生地域

狂犬病は世界中に広がっている病気で、特に発展途上国や地域において深刻な問題となっています。主な発生地域は、アフリカ、アジア、南アメリカ、東ヨーロッパなどです。これらの地域では、狂犬病対策の不十分さや、犬の適切な飼育環境が整っていないことが原因として挙げられています。

特にアフリカにおいては、狂犬病の発生率が高く、人口密集地域や農村部においても発生しています。また、アジアにおいても、インドや中国などで狂犬病が発生しており、特に農村部では犬との接触が多いため感染のリスクが高くなっています。

発展途上国においては、医療体制の整備が不十分であることもあり、狂犬病に対する予防接種などの対策が不十分であることが問題となっています。また、治療費用が高いこともあり、狂犬病が発生した場合の治療に困難を伴うことが多いのが現状です。

(2)発生原因と感染経路

狂犬病の発生原因は、狂犬病ウイルスに感染することです。狂犬病ウイルスは、唾液や血液などの体液を介して感染します。感染経路は、野生動物の噛みつき、唾液で汚染された傷口への接触、野生動物の排泄物による汚染などがあります。特に、狂犬病を持つ野生動物に噛まれた場合は、感染リスクが高くなります。

狂犬病ウイルスは、神経系に感染し、脳や脊髄を破壊するため、発病すると治療が困難となります。また、感染してから発病するまでの潜伏期間が長く、最長で2年以上とされているため、感染したことに気づかずに放置することが多いです。

狂犬病の発生原因や感染経路を正しく理解し、予防対策を行うことが大切です。特に、野生動物との接触時には注意が必要で、予防接種を受けることや散歩時にはリードを使うなどの対策が必要です。

(3)世界的な対策の現状

世界的には、狂犬病の発生を抑制するための対策が進められています。主な対策としては、人や動物の予防接種や野生動物の管理、感染した動物の撲滅、狂犬病に関する情報の共有などが挙げられます。

特に、狂犬病に感染している犬が多く存在するアジアやアフリカ地域では、狂犬病を根絶するための大規模な予防接種キャンペーンが実施されています。また、野生動物の管理にも力を入れており、多くの国では野生動物を捕獲して予防接種を行うなどの対策が行われています。

国際的には、世界保健機関(WHO)や国際獣医学協会(WVA)などが狂犬病の根絶に向けた取り組みを行っています。特に、WHOは「世界的な狂犬病撲滅計画」を策定し、2030年までに世界中で狂犬病の死亡者数をゼロにすることを目標としています。

しかし、狂犬病の発生を完全に防ぐことは難しく、予防接種や野生動物の管理が不十分な地域では、依然として多くの人々が感染しています。そのため、今後も狂犬病対策に対する国際的な取り組みや、地域ごとに適切な対策を実施することが重要です。

3.日本の狂犬病発生状況

(1)日本の狂犬病発生状況の変化

日本では、1950年代まで狂犬病の発生が報告されていました。その後、予防接種や飼い犬の登録義務化といった対策が進められたことにより、狂犬病の発生は減少していきました。そして、2006年以降は日本で野生動物からの感染例は報告されておらず、現在は国内で発生していません。

しかし、海外からの持ち込みや外国からの帰国者による感染例が報告されています。例えば、2018年には日本に持ち込まれた犬が感染していることが判明し、周辺地域での犬の殺処分や検査が行われました。

このように、日本国内での発生はないものの、海外からの持ち込みや旅行者による感染例は依然として存在するため、予防対策は必要です。また、万が一の発生に備えて、国内でも感染症対策を進めることが重要です。

(2)日本の狂犬病対策の現状

日本では、狂犬病が発生した場合に備え、犬や猫の飼い主に対して狂犬病予防接種の義務化が行われています。また、狂犬病感染動物と接触した場合には、速やかに医療機関を受診し、必要な予防措置を取ることが求められています。

狂犬病に感染した動物が発見された場合には、その動物を確保し、検査を行うことが重要です。日本では、動物保護施設や自治体などが、狂犬病感染動物の管理や処理を行っています。

さらに、野生動物との接触を避けるために、適切なゴミの処理や食べ物の保管、散歩時の注意などが呼びかけられています。また、地震や台風などの災害時には、ペットの安否確認や避難時の対応にも注意が必要です。

日本では、狂犬病が発生することは極めてまれであり、厚生労働省によると、最近10年間では狂犬病の発生報告はありません。しかし、隣国などでの発生も考えられるため、引き続き予防対策が必要とされています。

4.対策として考えられること

(1)予防接種

予防接種は、狂犬病に感染してしまった場合の治療法はないため、狂犬病を予防するために重要な手段です。狂犬病予防接種は、犬や猫を飼う人、動物関連職に従事する人、野生動物と接触する可能性のある人など、特定の人に対しては義務化されています。

予防接種は、ワクチンを接種することで、抵抗力をつけることができます。一般的には、3回の接種が必要とされ、1回目の接種後に2週間から1か月程度を経て、2回目の接種を行います。その後、数か月から数年おきに定期的な接種を行うことが推奨されています。

また、接種後には、接種部位に腫れや痛みが出ることがありますが、軽い症状であれば数日で自然に治まります。重度のアレルギー反応が出ることもあるため、医師の診断を受けることが大切です。

予防接種の他にも、散歩や野外活動時の注意点、野生動物との接触時の対応策など、狂犬病予防のためには様々な対策が必要です。狂犬病は、命にかかわる重大な病気であるため、予防には細心の注意が必要です。

(2)散歩の際の注意点

狂犬病に感染するリスクを減らすためには、散歩の際に以下の点に注意することが重要です。

まず、狂犬病に感染した動物と接触しないことが大切です。野生動物や外で飼われている犬や猫などにも感染の危険があります。特に野生動物と接触する場合は、危険な動物との接触を避け、生ごみや餌などの食べ物を散歩中に持ち歩かないようにしましょう。

また、狂犬病予防接種を受けていることも重要です。予防接種は狂犬病に感染した場合でも、病気の進行を遅らせたり治療効果を高めることができます。そのため、ペットと一緒に暮らしている人は、定期的に予防接種をするようにしましょう。

散歩中には、リードを付けることも大切です。リードを付けていれば、ペットが外に出たり他の人や動物に近づいたりするリスクが減ります。また、リードによってペットを抑制することができるため、他の動物や人に迷惑をかけないようにしましょう。

以上の点に注意することで、散歩中に狂犬病に感染するリスクを減らすことができます。ペットを飼っている人は、定期的な予防接種やリードの着用など、狂犬病対策を徹底するようにしましょう。

(3)野生動物との接触時の注意点

野生動物との接触は、狂犬病に感染するリスクを高めることがあるため、注意が必要です。特に、野生動物に近づきすぎたり、餌を与えたり、動物に触れたりすることは避けるべきです。以下に、野生動物との接触時の注意点を紹介します。

① 犬を連れて散歩する際は、犬をリードでしっかりとつなぎ、野生動物に近づかないようにしましょう。

② 野外での食事やキャンプを行う場合は、食べ物やゴミをしっかりと片付け、野生動物を誘引しないようにしましょう。

③ 野生動物を見かけた場合は、近づかず、動物に気付かれないように静かに退散しましょう。

また、万が一野生動物に噛まれた場合は、速やかに医療機関を受診することが必要です。狂犬病の感染可能性がある場合には、予防接種を受けることが重要です。

以上のように、野生動物との接触は避けるようにし、接触した場合には適切な対応を行うことが狂犬病予防につながります。

(4)災害時の対応策

災害時には、狂犬病に感染した犬が街中に出没する可能性があります。そのため、災害時には以下のような対応策が必要です。

  1. 犬の捕獲・飼い主の特定 災害時には、犬が捨てられたり、飼い主が行方不明になったりすることがあります。そのため、自治体では捕獲活動を行い、飼い主が特定できるように注意喚起を行います。
  2. 狂犬病予防接種の実施 災害時には、避難所などで多くの人が集まるため、犬との接触が増える場合があります。そのため、自治体では狂犬病予防接種の実施を呼びかけます。
  3. 感染予防の徹底 狂犬病に感染した犬からの噛まれ傷や唾液などを介して感染することがあります。そのため、避難所などでの食事や水の提供においては、犬に触れる可能性のあるスタッフが手袋を着用するなど、感染予防の徹底が必要です。

上記のような対応策が必要ですが、災害時には情報が錯綜することが多いため、自治体や専門家の指示に従うことが大切です。また、普段から予防接種の受け付けや、散歩時の注意喚起などを行うことで、災害時の被害を最小限に抑えることができます。

5.まとめ

(1)狂犬病は深刻な問題

狂犬病は、ウイルスに感染して発症する感染症の一種であり、人間や動物にとって深刻な問題です。感染すると、神経系を攻撃し、重篤な神経症状を引き起こします。治療法が存在せず、発症すれば死亡することが多いため、予防が重要です。

世界的に見ても、狂犬病は未だに多くの地域で発生しており、特にアジア、アフリカ、南アメリカなどの発展途上国では、人口の多さや野生動物との接触が多いことから、深刻な問題となっています。

一方、日本では狂犬病発生件数は減少傾向にありますが、未だに発生しているため、対策は必要不可欠です。狂犬病予防法により、犬や猫などのペットに対する予防接種が義務化されていますが、野生動物との接触や災害時の対応なども考慮する必要があります。

狂犬病は、単純な感染症として考えるのではなく、深刻な問題として捉える必要があります。予防を徹底することで、感染拡大を防止し、命を守ることができます。

(2)予防をしっかり行い、対策を考える必要がある

狂犬病は命に関わる深刻な病気であるため、予防をしっかりと行い、対策を考えることが必要です。具体的には、以下のような予防策が挙げられます。

(1) 予防接種 狂犬病に感染しないためには、狂犬病予防接種を受けることが大切です。狂犬病予防接種は、犬や猫などのペットだけでなく、人間にも接種が必要な場合があります。接種については、動物病院や保健所などで受けることができます。

(2) 散歩の際の注意点 ペットを散歩させる際には、リードをつけてしっかりと管理し、野良犬や野生動物との接触を避けるようにしましょう。また、街中での散歩では、歩道を歩くようにし、車道に出ないように気を付けましょう。

(3) 野生動物との接触時の注意点 野生動物と接触する場合は、保護服や手袋を着用し、狂犬病予防接種を受けた上で、専門家の指導を仰ぐようにしましょう。また、手の届かない場所には、食べ物やゴミなどを置かないようにすることも大切です。

(4) 災害時の対応策 災害時には、動物避難所への避難や、ペットの持ち出しを検討する必要があります。災害時は通常時とは異なる環境下でペットと一緒に過ごすことになりますので、注意が必要です。また、災害時には、野生動物との接触にも注意が必要です。

狂犬病は予防ができる病気です。人間に感染するリスクを減らすためにも、ペットに対する予防接種や、散歩や災害時の対応策など、しっかりと対策を考えましょう。

当院でも予防接種を行っております。受付にお問い合わせください。

画像出展)厚生労働省 狂犬病感染情報

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/

関連記事